日本放送協会における不祥事に関する会計検査の結果につい
ての報告書(要旨)
平
成
1
9
年
9
月
検査の背景及び実施状況
1 参議院からの検査要請の内容 ( 1) 検査の対象
日本放送協会 ( 2) 検査の内容
日本放送協会における不祥事についての次の各事項である。 ① 番組制作費等の経理の実施状況
② 不祥事の再発防止に向けた体制整備の状況 ③ 関連団体の余剰金の状況
2 検査の実施状況
会計検査院は、上記の要請された検査の実施に当たり、在庁して資料の分析を行った ( 注)
ほか、日本放送協会(以下「協会」という。)の本部ほか14部局(以下「15部局」とい う。)について279人日を要して会計実地検査を行った。
(注) 本部ほか14部局 本部及び大阪、大津、名古屋、静岡、福井、岐阜、 広島、岡山、鳥取、福岡、北九州、仙台、札幌、帯広各放送局
番組制作費等の経理の実施状況及び不祥事の再発防止に向けた体制整備の状況 1 検査の結果
( 1) 番組制作費等の経理の実施状況 ア 会計検査院の検査
番組制作費は、国内放送費と国際放送費に属するもので、番組の制作に要する経 費であり、国内放送費に属する番組費(18年度実績額195, 528百万円)は、出演・委 嘱料( 同49, 595百万円)、旅費・交通費( 同6, 402百万円)などの経費からなっていて、 国際放送費等の場合も同様の経費からなっている。
算書、旅費請求書等の書類を調査・照合したり、協会の関係者から業務実態を聴取 したりするなどの方法により検査を実施した(検査実施部局や検査実施件数等につ いては表1及び表2参照)。
表1 検査実施部局
費 目 検 査 実 施 部 局
11部局(本部及び大阪、大津、名古屋、静岡、岐阜、広島、岡山、福岡、 放 送 料
仙台、札幌各放送局)
9部局(本部及び名古屋、静岡、岐阜、広島、岡山、北九州、仙台、 打 合 せ ・ 会 議 費
札幌各放送局) 旅 費 15部局
9部局(本部及び大阪、名古屋、静岡、広島、岡山、福岡、北九州、 自 動 車 料
仙台各放送局)
11部局(本部及び大津、名古屋、静岡、岐阜、広島、岡山、福岡、北九州、
謝 礼
仙台、札幌各放送局)
12部局(本部及び大阪、大津、名古屋、静岡、岐阜、広島、岡山、福岡、 役 務 費 等
北九州、仙台、札幌各放送局)
9部局(本部及び大津、名古屋、岐阜、広島、岡山、北九州、仙台、 固 定 資 産 、 備 品 等
札幌各放送局)
現 金 ・ 預 金 6部局(大阪、大津、福岡、北九州、仙台、札幌各放送局)
表2 検査実施件数等
検査対象 検査実施 費 目 検査対象年度
件数( 件) 金額( 千円) 件数( 件) 金額( 千円) 放 送 料 15∼18 117, 611 11, 858, 758 649 203, 974 打 合 せ ・ 会 議 費 15∼18 15, 477 229, 228 294 14, 082 旅 費 17、18 132, 993 2, 576, 883 2, 921 110, 466 自 動 車 料 16、17 397, 823 2, 076, 928 3, 903 15, 886 謝 礼 15∼18 12, 699 760, 282 154 29, 934 役 務 費 等 15∼18 81, 978 23, 642, 960 248 142, 127 ( 注) 検査の実施に当たっては、経理適正化策が執られた前後の年度で、主として、CP以上の職員や
使用額が多額に上っている職員が起票したものを中心に抽出した。
その結果、会計検査院が今回検査した範囲では、現時点で特に架空請求や架空出 張等の不正な事態は見受けられなかった。
イ 協会の調査
を行うこととし、次のような調査を実施してきている。
すなわち、①18年4月17日から5月28日にかけて、架空出張等の不祥事の関係部局 である報道局スポーツ報道センター及び札幌放送局の11年度から17年度までの間に 支払われたすべての経費を対象として、「緊急業務調査」を実施した。②上記の調 査と並行して、経理適正化策により出張報告書の提出を義務付けることとした16年 11月から18年3月までの間に支払われた全部局の旅費を対象として、「出張旅費の緊 急総点検調査」を実施した。また、③18年8月3日から12月19日にかけて、報道局ス ポーツ報道センター及び札幌放送局以外の全部局を対象に、証ひょう書類が保存さ れている11年度から17年度までの間に支払われたすべての経費を対象として「全部 局業務調査」を実施した。
協会におけるこれらの調査において、不祥事に該当するような新たな事態は判明 しなかったが、表3のとおり、不適切な事態が判明している。
表3 協会の調査の結果、不適切な事態が判明したもの
調 査 結 果
費 目 件数 戻入( 追給) 金額
不 適 切 な 事 態
( 件) ( 円) 放 送 料 放送料の重複支払等 59 3, 434, 042 打 合 せ ・ 会 議 費 公私の区別があいまいな支払等 42 307, 631 旅 費 宿泊区分( 自宅泊等) の変更等に伴う精算
処理を怠っていたもの 968 13, 650, 165 出張旅費の請求漏れなどにより、追給処 ( 追給) 理が必要なもの 115 894, 995 自 動 車 料 公共交通機関が利用できる時間帯でのタ 336 918, 440
クシー利用等
謝 礼 会議出席者への重複支払等 2 15, 170
役 務 費 等 該当無し − −
固 定 資 産 、 備 品 等 所在が確認できなかったもの 29 − 現 金 ・ 預 金 (調査を実施していない)
( 注) 上記の不適切な事態について、当該金額はそれぞれ戻入(追給)処理されている。
会計検査院の会計実地検査では、協会が実施した全部局業務調査等の各調査につ いても、検査した15部局における調査内容について、業務調査報告書等の書類や関 係者から調査実態を聴取するなどの方法により検査を実施した。
に不備な点があるとは認められなかった。 ( 2) 不祥事の再発防止に向けた体制整備の状況
16年7月、協会の芸能番組担当CPによる番組制作費不正支出問題が発覚した。そし て、これ以降も次々と不祥事が発覚したため、協会は、新規の不祥事の発生防止に努 めてきたが、さらに18年4月、スポーツ報道担当CPによる架空出張等が発覚した。
このため、協会では経理処理の不正を未然に防止するために16年10月に放送作家等 審査委員会を設置することにより、放送作家等の起用について事前審査制度を導入し たり、同年11月に番組制作部局に経理審査を担当する専任管理職を配置したり、18年 4月に航空機利用における搭乗半券添付を義務化したりするなどの経理適正化策を講じ ている。
会計検査院の会計実地検査では、協会が不正抑止、再発防止を目的として実施した 経理適正化策や内部監査体制について、前記15部局における経理の実施状況の検査の 過程で放送料や旅費等の各費目ごとの経理適正化策の遵守状況を検査するとともに、 経理審査担当管理職員や監査室の職員等の関係者から、各費目に共通する経理適正化 策の遂行状況を聴取するなどの方法により検査を実施した。
その結果、会計検査院が今回検査した範囲では、現時点で特に不適切な事態は見受 けられなかったが、委嘱業務の事前審査の徹底を更に図る必要があるものも見受けら れた。
2 検査の結果に対する所見
協会においては、現在、19年度「コンプライアンス推進のアクションプラン」に基づ き、①コンプライアンス月次点検を実施して、業務管理・経理管理の徹底を図ること、 ②出張旅費をはじめとした経費処理のモニタリング活動を強化し、適正経理の一層の徹 底を図ること、③反面調査の活用や抜き打ち監査を実施するなど監査の実効性の向上に 努めること、などの不正防止機能の強化に取り組んでいるとしているが、上記の項目を 確実に実施していくことが必要である。
関連団体の余剰金の状況 1 検査の結果
( 1) 関連団体の決算の状況
協会の関連団体数は、平成17年度末現在、子会社21社、関連会社4社、関連公益法人 等9団体、の計34団体。
ア 利益剰余金等
・17年度末現在、日本放送協会健康保険組合を除く関連団体33団体の利益剰余金等 の総額は886億余円。(子会社21社の利益剰余金の合計759億余円、関連会社4社の 利益剰余金の合計48億余円、関連公益法人8法人の内部留保額の合計79億余円。) ・なお、関連公益法人の内部留保額は、財団法人6法人については「公益法人の設立 許可及び指導監督基準」を準用して会計検査院が試算し、学校法人と社会福祉法 人については、流動資産から流動負債を差し引いた額を内部留保額とした。 イ 子会社のうち協会が直接出資している19社の17年度決算の状況
・営業利益率の平均は2. 6%と、おおむね標準的な水準と思料された。
・自己資本比率及び総資産に対する利益剰余金の割合の平均は、いずれも50%を超 えており、当座比率の平均も200%を超えていた。
・全体として財務面での健全性が高いと認められ、また、子会社の中には十分な財 務上の余力がある会社が見受けられた。
ウ 配当の状況
・協会は、子会社の配当に関する考え方について、16年度決算に基づく配当までは、 子会社の健全な財務体質を図ることなどを目的として、利益に比して配当を抑制 していた。
・17年9月に、これまでの配当に関する考え方を転換し、17年度決算に基づく配当か ら、新たな考え方によることとした。
・子会社19社の17年度決算に基づく配当は総額49億余円。これは前年度の配当に比 べ金額では40億余円、配当性向では14倍の大幅な伸びとなった。
・特例配当を実施した子会社3社の18年度末利益剰余金の合計は、前年度末に比べ2 0億余円減少していた。
・子会社19社の18年度末利益剰余金の総額は744億余円となっていて、わずかではあ るが前年度末に比べ約3300万円、0. 04%減少していた。
( 2) 協会の関連団体との取引状況等 ア 契約に関する規定
・関連団体を含めた外部との取引等に当たって適用される規程類は、その適用範囲 が明確となっていないものなどが見受けられた。
イ 協会と関連団体との取引状況等
・取引の大半は、協会職員の削減に伴い協会職員とともに業務が関連団体へ移行し た経緯があることなどから、随意契約による業務委託がほとんどとなっていた。 ・関連団体との業務委託契約は、委託業務従事者に占める出向者の割合を減少させ て委託人件費を削減している事例が見受けられるものの、現在の協会の積算基準 では、委託業務従事者に指定された出向者の人件費は協会職員と同等の水準であ ることから、当該出向者の人件費相当額については、職員給与等を業務委託費と して支払っているものとなっていた。
ウ 協会における業務委託額の妥当性の検証
・関連団体との取引に関して、協会における業務委託額の妥当性の検証は、必要に 応じて、見積書等を確認するにとどまり、支払証拠書類等により実際に関連団体 が支払った金額の確認を行うまでには至っていなかった。
エ 協会が関連団体から収納する副次収入
・協会が関連団体から収納する副次収入のうち、二次使用料収入は、外部の利用者 が関連団体に支払った額から当該関連団体における事務処理費用等を考慮し、こ れを控除した額となっていた。
・しかし、二次使用料率の適用条件は多岐にわたっており、個々の適用条件ごとの 収支状況を確認できないことなどから、控除に適用する二次使用料率が実際に妥 当なものとなっているかの判断は困難であると思料された。
2 検査の結果に対する所見
らの子会社に対しては、今後も利益剰余金額、当座資産額等の資産状況等を勘案して特 例配当を要請するなどの必要があると考えられ、ひいては、これをもって協会の財政に 寄与させることが望まれる。
関連団体との取引については、協会の主たる財源が受信料であることにかんがみ、取 引を通じて関連団体に過剰な利益を与えることにならないよう、次のことに努める必要 がある。
( ア) 取引の大半が随意契約による業務委託であることから、契約の競争性の確保を図る 観点からも、一般調達への移行を含めた関連団体との業務委託の在り方を検討するこ と
( イ) 委託業務従事者に指定された出向者の委託人件費相当額については、職員給与等を 業務委託費として支払っているものであることから、当面、関連団体と随意契約によ る業務委託を継続せざるを得ない場合であっても、例えば委託業務従事者に占める出 向者の割合を減少させるなどして、委託費を削減すること
( ウ) 業務委託額の妥当性の検証は、支払証拠書類等により実際に関連団体が支払った金 額の確認を行うまでには至っていないことから、契約額の妥当性、透明性の確保に留 意し、実績原価を確認する機会を増やすなど、関連団体の協会からの業務委託額の検 証をより積極的に行うこと
( エ) 二次使用料率は、実際に妥当なものとなっているかの判断が困難であることから、 料率の設定に当たっては、今後も算定基準をより合理的なものとしていくこと
( オ) 関係規程類の適用範囲が明確となっていないものなどが見受けられることから、関 係規程の体系的な整理を推進すること